今日のテーマは「水分ストレス②」です。
前回の投稿にも書いたとおり、トマトを甘くする方法の一つに意図的に「水分ストレスを与える」という手法があります。
しかし、これは良い面もあり悪い面もありで一長一短です。
いや場合によっては、一長十短かもしれません。。
今回はその「短」の部分、悪い部分を紹介します。
トマトが水分ストレスを受けると、植物ホルモンと呼ばれるものを合成して、体調を整えようとするようです。
なんだか人間みたいですね。カッコいい!(むむっ)
この植物ホルモンのなかで、アブシジン酸(ABA)は特にストレスホルモンとも呼ばれ、植物の水分含量が低くなって「乾燥してきたー!」とストレスを感じると、根っこなどで合成されます。
合成されたABAは、葉に移動し、活性酸素を生成した後、葉の気孔を閉じる作用を起こします。
そして葉の気孔を閉じることで、葉からの水分蒸発を抑え始めます(蒸散の抑制)。
水分ストレスを感じて「カラカラや~」となっているので、体中の穴という穴を閉じて水分蒸発を防ぐってことですね(すげーーーー!!)。
ここまでの説明は、トマトさんストレスに強くて「すげー」「カッコいい」という、いわゆるひとつの「褒め殺し」です。
ここから本題の「一長一短の短」部分です。
〇気孔が閉じているので光合成に必要なCO2を植物体内に取り込めない。
〇光合成量が減少する。
〇光合成による「糖(ショ糖、デンプン)」の合成量が減少する。
結果、端的にいうと「収穫量が減少する」「美味しさが減少する」です。
前回の投稿では、「水分ストレス」を与えると甘くなるという内容を書きましたが、、、
このように悪い面がめちゃくちゃあるんです。。。
農家さんは「美味しいトマトを作りたい」「たくさん収穫したい」この想いと反する作用といつも戦っているんです。
甘いトマトを作りたいから「水分ストレス」を与える。
すると「量が取れない」。
なんとも天邪鬼なトマトさんですねえ。
でも、だからこそ美味しいトマトには価値がある。
なので、私はスーパーで高くて美味しいトマトを見かけたら、「お疲れ様でした」と声をかけています(本当ですよ)。
ちなみに、前述したストレスホルモン【ABA】は「水分ストレス」だけではなく「強光、低温、高温」などにも反応して合成されます。
このように、私のように超神経質なトマトさんの栽培管理はめちゃくちゃ大変ってことなんです。
夏はハウス内が平気で40度を超える・強烈な太陽光が降り注ぐ、冬は暖房をガンガン焚いても温度が上がらない、、、、、
上げればキリがないほどの試練を乗り越えて、無事収穫されて、お客様の口に運ばれるトマトさん。私はまだ栽培を開始していないのに偉そうなことばっかり語っていますが、農家さんの苦労を想像すると涙が出てきます(本当です)。
今日もそんなトマトさんに、心から「いただきます」