今回のテーマは「水分ストレス③」です。
トマトに水分ストレスを与えるとなぜ甘くなるのか、、、今日はググっとアクセルを踏み込んで、、、多くの人が興味が無いと分かり切った内容を書いてみます。
意図としては、農業者はこんな事まで考えて、「美味しいトマトを作りたい!」と日夜研鑽を重ね、頑張っているんだと少しでも感じて頂きたいということ。
あ、、「甘いトマトが美味しいトマト」の条件では無く、甘さと酸っぱさ、味の濃さなどのバランスが大事だということは大前提ですね、、
前回の投稿「水分ストレス①」「水分ストレス②」でも口酸っぱく言ってきましたが、トマトに意図的な水分ストレスをかけることで、甘いトマトを作る手法があります(甘いんだか酸っぱいんだかわかりませんね)。
そして今回もやっぱり水分ストレスについてです。
水分ストレスは奥が深いんです(たぶん)。
色々と、トマトの生理生体を調べてみてはいますが、多種多様の知見があり、どれが正確なのかは正直分かりません。今はとにかく頭でっかちに知識を詰め込んでおいて、色々試しながら、いつか最高のトマトを作りたいと思っています(トマトをそんなに好きじゃないのに君のその情熱はどっからくるの?)。
さて、本題です。
トマトは光合成によって、自身の身体を作る材料やエネルギー源を生産します。
最終的には主に、『スクロース(ショ糖、砂糖の主成分)』と『デンプン(ブドウ糖であるグルコースが高分子化したもの)』が作られます。
〇葉で作られた、スクロースは「今すぐエネルギーが欲しい!」と言っている、果実などに即座に輸送されます。
〇デンプンは、日が落ちて、光合成が行えない夜間でもトマトが成長できるように、葉内などに一時的に蓄積されます。
私が凄いと思ったのは、ブドウ糖であるグルコースがあえて高分子化してデンプンとして蓄積される理由です。
それは、グルコースは可溶性なので、そのまま細胞水に溶けると細胞内の浸透圧が高くなりすぎてストレスがかかってしまうため、あえて高分子化してポリマー状の不溶性のデンプンとして体内に一時保存するという植物の能力です(生物は凄い!)。
そして、水分ストレスがかかった時の、トマトの動きです。
水分が少なくなった、トマトさんの体内では細胞浸透圧が上昇します(水分が少なくなって、濃度が濃くなってしょっぱくなるイメージです)。
浸透圧は、濃度が高い方が低い方の水分を引き込む力なので、要はトマトさんが「水分補給しようとしている状態」です。
そして、この状態になると、トマトさんの体内では、不溶性のデンプンが分解され始めるようです。
水分が不足して喉がカラカラになったので、更に浸透圧を上げるような働きをするってことです。
そして、分解されたデンプンはブドウ糖であるグルコースに戻ります。
そしてそして、可溶性であるグルコースは細胞水に溶けて、細胞内の浸透圧が高くなります。
浸透圧が高くなるということは、トマトが積極的に水分を補給できる状態になるということです。
そしてそして、ブドウ糖が集積されるので、トマトの「糖度が上がる=甘くなる」という状況が完成です(トマト最高!!!!!)。
ただし、急激な浸透圧上昇や急激な吸水は、トマト果実の割れなどを誘発することもあるので、その辺りの栽培管理は農家さんの腕の見せ所かもしれません。。。。
まあ、いくら原理を理解していても、上記のような情報が視覚化されているわけではないので、手持ちの環境情報などから判断するのはやっぱり大変な事です。農家さんお疲れ様です!
いずれにしても、トマトさんは凄いですね。
浸透圧ストレスを防ぐために、デンプンとして保存していたかと思えば、それを逆手にとって、喉カラカラでピンチの時に浸透圧を上げるために利用するという策士っぷり!
こんな感じで、復習がてら今日は少し突っ込んだ内容を書いてみました。
だらだら多くの人にとって興味の無い内容をすみませんでした。
あ、ちなみに、糖類には、ショ糖、果糖、ブドウ糖などありますが、味覚で感じる甘さの順番は「果糖>ショ糖>ブドウ糖」だそうです。
トマトの糖度を上げたいといったときに、スクロース(ショ糖)、グルコース(ブドウ糖)どちらで蓄積させるか、どちらの甘みが好みか、などまで考えて意識的に味を調整できるようになれれば無敵ですね!
でもこんな事はシビアすぎて研究者か神様じゃなきゃできないと思うので、あきらめます!笑
それでは、また次回!